今将人のweblog

I was a monster, now I am a desert traveler on the redhill.

権力がほしい社会不適合者より

セクシュアルマイノリティと医療・福祉・教育を考える全国大会2022で、分科会「LGBTの就労状況と企業の支援」を担当します。そのために少し覚え書きを。

 

私が就労にこだわるのには理由がある。素朴に、単純に、「経済力は権力だ」と考えているからだ。
権力とは何か? いくつかの定義があり、例えば社会学では「他人に言うことを聞かせる力」という定義もある。
しかし、私はその意味での権力がほしいわけではない。私は「自分が自分の生きたい人生を選ぶ力」として経済力がほしい。だから働きたいと切に思っている。

70年代、関西の巨大な新興住宅地で育った私の周囲には、会社員の夫、専業主婦の妻、子供は二人、子供が義務教育を終えたら妻はパートタイムで働く、という雛形が明確にあった。

大学の部活の中で、男子部員が宴席に出て、女子部員が調理室で料理を作る、ということが何度かあった。「同じ会費を払っているのに、なぜ私は食事を食べられないのか」と女性の先輩に聞いたところ、「そんなことを言ってると社会不適合者になるよ」と言われたことがある。

なるほど、雛形にはまれない人間は社会不適合者か。

今なら「おっしゃ、不適合者上等!」と言えるが、当時は打ちのめされた。私は雛形にはめようとする周囲に馴染めず、いじめられ、足掻き藻掻き、精神を病んで、家出という形で地元を離れた。

女性と男性が結婚という形でつがいにならなくても、性別に期待される役割をこなさなくても、働けば飯が食える。自分の生きたいように生きていける。だから働く。働きたい。

LGBTの活躍、障害者の活躍、ダイバーシティインクルージョンな新たな働き方を!」とは言うものの、私にとってそれはキラキラと華やかでスタイリッシュなイメージではない。泥(泥水ではない)をすすって生き延びた”社会不適合者”が、権力がほしいと七転八倒しているだけだ。

だから私は働きたい。自分の人生を自分で選ぶために。